1. はじめに
どこのネットワークにも少なくとも1つくらい設定があるだろうと思われるstatic routeですが、意外と細かい指定までは覚えていなかったりしましたた。static routeはネットワークエンジニアの登竜門的な資格であるcisco技術者認定試験のCCENTやCCNAの範囲としても含まれており、基本に立ち返り、確認した内容を纏めました。
2. 基本の3つの書き方
2-1. 宛先にnext-hop address のみを記載する
最も基本的な書き方と考えられるstatic routeの書き方です。
ルータのインタフェースのUP/DOWN状態に関わらず、ルータが起動している間は基本的*1にルーティングテーブル上にrouteがインストールされ続けます。
*1 宛先ネットワークに宛先(next-hop)が含まれる循環参照の場合を除きます。(例:ip route 10.0.0.0 255.255.0.0 10.0.1.1等)
192.168.1.0/24宛のパケットを192.168.0.11へ送付する場合
ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 192.168.0.11
2-2. 宛先にnext-hop interface のみを記載する
この設定では宛先に指定したインタフェースがUPとなっている時のみルーティングテーブルにrouteがインストールされます。
このパターンで設定した場合には、ルータが宛先(next-hop)を調べる為に宛先解決としてARPを送信します。この際ARPに応答があればパケットの転送を行います。
その為、宛先インタフェース上にProxy-Arpが有効になっている機器が存在する場合、大量のArpが返され、Arpテーブルのサイズが大きくなってしまう可能性があります。結果的にルータのメモリやCPU,ネットワーク帯域を無駄に消費する事に繋がります。
ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 ethernet1/0
2-3. 宛先にnext-hop interface と address を併記する
この設定では宛先に指定したインタフェースがUPとなっている時のみルーティングテーブルにrouteがインストールされ、”2-2“の場合に問題となる可能性があったProxy-Arp問題にも対処する事ができます。
ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 ethernet1/0 192.168.0.11
3. 他機能との組み合わせについて
3-1. track設定
WAN(インターネット)に接続する回線としてメインとバックアップの2系統準備している場合など、あるインタフェースが起動している間のみ、一部のルーティングを有効にしたい場合があります。この場合はtrackの設定を実施します。
track 1 interface ethernet0/0 line-protocol
ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 ethernet1/0 192.168.0.11 track 1
このtrack interfaceの設定では他にもDHCPやIPCPによる状態を確認する事もできます。
trackの設定にはinterface以外にもトリガーとする事ができます。routingのインストール状況を見る事や、IP-SLAと組み合わせ、ある宛先に対するPingの実施結果からルーティングの有効状態を変更する事もできます。
3-2. VRFの指定
ルータでVRFを利用している場合は、以下の様にVRFを指定します。その他の指定方法に変更はありません。
ip route vrf VRF-Name1 192.168.1.0 255.255.255.0 ethernet1/0 192.168.0.11
3-3. AD値の指定
static routeのAD値はデフォルトで1という事もあり、通常はConnectに次ぎ優先されるルーティングです。ただBGPやEIGRPなど動的ルーティングプロトコルから受信するルーティングが消失された時にのみ利用したい場合があります。
この様な場合にはAD(Administrative distance)値を指定する事ができます。
ip route 192.168.1.0 255.255.255.0 ethernet1/0 192.168.0.11 210
上記の場合は210を指定していますが、これは動的ルーティングプロトコルのAD値より優先度が低い値にしており、動的ルーティングプロトコルから学習した経路が消失した場合に利用される様になっています。
AD値の一覧は以下の通りです。
ルーティングプロトコル | AD値 |
---|---|
接続インタフェース | 0 |
スタティックルート | 1 |
EIGRPサマリールート | 5 |
BGP | 20 |
内部EIGRP | 90 |
IGRP | 100 |
OSPF | 110 |
IS-IS | 115 |
RIP | 120 |
EGP | 140 |
ODR | 160 |
外部EIGRP | 170 |
内部BGP | 200 |
不明(*) | 255 |
不明の場合はAD値が255となります。このAD値255は信頼されないルーティング情報としてルーティングテーブルにインストールされない為、AD値を指定する場合は254以下の整数を設定する必要があります。